酒場でのことは夢まぼろしだ。

祇園は富永町のコッキ会館二階の「バーいそむら」で初めて飲んだのはひと回りぐらい上の街の先輩と一緒だった。
「バッキー、メシ食う前にいそむらいこか」といわれて連れてもらった。
階段を上がり扉を開けるなり先輩に「まあマティーニ飲んどけや」といわれた。
先輩はここではマティーニと決めているらしく注文するとそれには無関心でテレビのニュースを眺めながらマスターとテレビの事件について話していた。
マティーニが美味かったので先輩より先に空けてしまい「しもた」という顔をすると「うまいやろここのマティーニ」と先輩は喜んでいた。
随分昔の話だが昨日のようだ。

バーで覚えているのは場面だけで酒はほぼ覚えられない。
飲めば忘れるし俺の場合は毎日上書きをし続けているので画像は残るが理屈は残らない。
酒場での話も覚えていないので、その瞬間のそこら辺の何かを採集というか翌日に鑑識へまわすためにその瞬間のなにかをポケットに入れて帰る。