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第326回 ダイアナ・ロス編

今夜は七夕さんです。

今夜は七夕さんです。なのでダイアナ・ロス。マービン・ゲイとのデュエットの「噂の二人」や「マイ・ミステイク」や名曲「ユー・アー・エブリシング」もいいですが、私はナイル・ロジャースがプロデュースした「アップサイド・ダウン」の頃が好きです。ライオネル・リッチーとの「エンドレス・ラブ」もよくスナックで歌いました。

二日前は先斗町の百練のすぐ近くで火事が起こり大変でした。火事は本当に怖いです。気をつけなければならないと改めて思いました。ご心配をいただきありがとうございます。

七夕の裏寺・百練、今夜はダイアナ・ロス。ユー・アー・エブリシング。カマンベール。2016・7・7

客の思い通りにならないからゴキゲンがある、街のスナック。

思い通りになる店はつまらない。

スナックという言葉の意味さえ知らない俺が「街のスナック」と付き合ってからもう30年以上になる。30年て何なんだ。まあいい。

 初めに言うと「街のスナック」というのは時代の化石ではない。置き忘れてきた街の片隅でもない。一部の人達だけの店でもない。「街のスナック」というのは今最も目を凝らして注目をすべき店であり、業態だと思う。言い換えれば時代が「街のスナック」に向かうべきだと思う。なぜか。お客が何かを求めたからといってそれがリクエストどおり返ってくるとは限らないのが「街のスナック」だからだ。お金を払っても思い通りにはならないから、今、「街のスナック」こそが生き生きしている。

 「街のスナック」という業態などないが「街のスナック」とは、お金のあるなしや声の大きい小さいや美人とか男前とか歌の上手い下手とかで何も決まらないようなところのことを指す。価値観が酔うているような店を俺は「街のスナック」だと呼びたい。呼びたいんだ。

 世間は外に否応なくある。飲食店はもっと勝手にやってくれたらいいと思う。昔の飲食店はもっと勝手にされていたし横着な俺はよく怒られたし来るなともいわれた。そして昔なら許してもらえるまでそこに通った。今は来るなと言われたら他の店に行くかも知れない。俺もいつのまにかしょうもない客になった。嫌いと言われたらすぐにそこを嫌いになり他の店を探すしょうもない客。客は他の店に行くことが出来るが、店は「あんたもうきんといて」となかなか言えない。それがわかっているからその店の空気を匂いを時間を世界を壊さないようにしながら、あるいは壊すようにしながら飲み遊ぶのが男前の客だ。そして男前の客を育ててくれるのが思い通りになりそうでならない、けれども飲ませ遊ばせてくれる「街のスナック」だ。

 昭和40年代後半、スナックはたくさんあったが平成も20年を過ぎた今はめっきり少なくなった。なぜか。それは行く目的がハッキリとしないスナックへ行かなくなったからだ。店にいる人と会いたくて行っていた人はキャバクラやもっと密接系の店に行くようになった。歌を歌いたくて行っていた人は飲む飲まないは関係ない歌専門の店や仲間だけでカラオケボックスに行くようになった。

 「街のスナック」では見知らぬおっさんが聞いたこともない歌を気持ちよさそうに歌っている。聞いている歌で何かを思い出して歌いたい歌をリクエストすると先に5曲も歌が入っている。二人で飲んで話していたら隣の隣の席に座って飲んでいたおっさんが「それは違うやろー」と関わってきて「チョットーあかんてー○○さん」とカウンターの中のママが困った顔をして俺らに「ごめんねー」と言う。そのうちに気がつけば別々に来ていたお客達がなぜか一体になって全員でコーラスをしていたりする。

「街のスナック」は思い通りにはならない。街の店だからそれで普通だと思う。いい時や悪い時があるから街の店に飽きることがない。街のスナックでさあ苦笑いを肴に飲もうぜ。さあ行こう。